OCTOBER 17, 2016

ポケモンWCS2016 世界大会の考察 ~ポケモンカードゲームディレクター長島の仕事~

こんにちは。ポケモンカードゲームディレクターの長島です。先日、ポケモンカードゲーム最大のイベント「ポケモンワールドチャンピオンシップス2016」が開催されたのは皆さんご存じかと思います。この世界大会は例年、数々の出会い、ドラマ、感動を生み出すだけでなく、僕たち作り手にとっては、環境の集大成を見る場でもあります。

僕も視察に行ってきましたので、今大会の環境の考察を行いたいと思います。

8月19日 大会1日目

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こちらのホテルが、今大会の会場となるサンフランシスコ・マリオット・マーキスです。ここで、世界チャンピオンの座を賭けた3日間の戦いが行われます。

Day1 新要素「GX」の発表

今回の「ポケモンワールドチャンピオンシップス2016」(以下、「ポケモンWCS2016」)が開催されるにあたって、僕自身にとって、とても大きなイベントがひとつありました。それは、ポケモンカードゲーム新シリーズ「ポケモンカードゲーム サン&ムーン」そして「ポケモンGX」の初お披露目です。

例年のポケモンWCSでは、ゲーム『ポケットモンスター』シリーズ関連の発表は行われていましたが、ポケモンカードゲームの新情報を発表するのは今大会が初めてです。これまでポケモンカードゲームの新情報は、主に公式ウェブサイトなどで発表されていました。

しかし今回は、世界中のトッププレイヤーが集結したその場で、彼らの反応をリアルタイムに目にするのです。このような機会はなかなかありませんので、ありがたいと思うのと同時に、非常に緊張しました。プレイヤーは新情報を「面白そう」「楽しみ」と思ってくれるのか。それとも落胆させてしまうのか。彼らからどのようなジャッジを下されるのか。

オープニングセレモニーが始まりいよいよ映像が流れると、歓声が沸き起こり、会場中の皆さんがモニターに釘付けに。そして多くの人が、モニターを写真で撮影したり録画したりしていました。モニターに映し出されるソルガレオGX、ルナアーラGXのカードに書かれている要素をしっかりと理解しようとしているのです。皆さんがとても興味を持ってくれた様子に、ひとまずは安心しました。

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※ソルガレオGX、ルナアーラGXの画像は開発中のものです。デザインや内容が変更になる場合があります。

ゲーム『ポケットモンスター』シリーズの新作が発売されることを受け、ポケモンカードゲームも、約3年間続いた「XYシリーズ」から新たな遊びへと発展させるための開発が進められました。

苦労の末たどり着いた「GX」。対戦中に1回しか使うことのできない「GXワザ」は、実感しやすい強さ、逆転、爽快感、駆け引きの奥深さなどをすべて実現し、皆さんに楽しんでいただけるものを作り切ったと思っています。ですので、ぜひ新しい環境を楽しみにしていてください。

この日はDay1予選が行われましたので、それを観戦し、ポケモンWCS2016の1日目が無事終了しました。明日の本大会も楽しみです。

8月20日 ポケモンWCS2016 2日目

Day2 本大会予選の傾向

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いよいよDay2のトーナメントが始まりました。

ジュニア・シニア・マスターディビジョン共に、環境の中心になっていたのは、大きく分けて下記の3種です。

■ワザ「よるのこうしん」を主力にしたデッキ

■相手にグッズを使えなくさせて、プレイを妨害するガマゲロゲEXデッキやオーロットBREAKデッキ

■特性で攻撃するゲッコウガBREAKデッキ

 

「よるのこうしん」デッキやオーロットBREAKデッキでは超ポケモンが多く使われるので、これに対抗するために、超に強い悪タイプのポケモンで組んだデッキも見受けられました。これらの状況は、各国の予選の段階から見て、予想通りになっていたと思っています。

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「よるのこうしん」デッキやオーロットBREAKデッキが多く使われるなかで人気が高かったのが、国内外の大会で上位入賞の常連になっているガマゲロゲEXデッキです。

アメリカでは「Water Toolbox」と呼ばれ、ガマゲロゲEXのワザ「ブルブルパンチ」の効果で、相手がグッズを使えないようにして戦います。「よるのこうしん」デッキなどはグッズを多用しますので、大会ではそれらが主流になると見越した対策が「ブルブルパンチ」なのです。さらに「うねりの大海」を入れることで、オーロットBREAKの「サイレントフィアー」に対しても、受けたダメージをすぐに回復することができます。

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ポケモンWCSをずっと見てきて感じるのは、世界戦に上り詰めてくるプレイヤーたちは、対応力がありつつも、自分のオリジナリティーを出せるデッキを好む傾向があるということです。このWater Toolboxも、周りの環境に合わせてサポート役のポケモンを入れ替えることで、他のデッキへの対応力が上がります。

ちなみに僕の個人的な予想では、ガマゲロゲEXの弱点を突く草タイプのビークインが多くのデッキに採用されていたり、サポートの「ポケモンレンジャー」(「ブルブルパンチ」の効果をなくすことができる)が出たので、それを恐れてガマゲロゲEXデッキが減るのではないかと思っていましたが、外れてしまいました(笑)。

今日勝ち上がったデッキについては後述します。
明日はいよいよ決勝戦。2016年の世界チャンピオンの誕生です。

8月21日 ポケモンWCS2016 3日目

ついに本大会最終日。前日の予選大会で見事勝ち抜いた選手たちによる最終決戦が始まります。
今回の決勝戦はニコニコ生放送で配信され、僕はその解説を行うために、画面越しでの観戦でした。

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左から、株式会社ポケモン マスタージャッジの伊澤さん、長島、Youtubeの実況動画でおなじみのペリカンさん。この3名で実況・解説を行いました。

Day2 決勝戦に登場したデッキたち

決勝に上がってきたデッキは、どれも予想外。とても個性的なデッキ構成で、非常に興味深い結果になりました。

 

マスターディビジョン
MタブンネEX(優勝) VS ゲッコウガBREAK

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シニアディビジョン
メガヤンマBREAK+ビークイン(優勝) VS ガマゲロゲEX+クロバット

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ジュニアディビジョン
ダークライEX+ギラティナEX(優勝) VS オーロットBREAK

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傾向としては、どのデッキも「よるのこうしん」やオーロットBREAKに勝てるように構成されています。その上で、自分なりの勝ち筋を明確に持ったデッキになっています。

 

マスターディビジョン 優勝デッキ

今大会で最も注目すべきは、マスターディビジョンで見事優勝したMタブンネEXデッキです。このデッキは、現環境ではそれほど注目されていなかったほぼノーマークのデッキであったため、決勝戦に勝ち上がってきた時点で、話題の的になっていました。そしておそらく、狙い通りのバトルを実現できていました。順調に場を作り、相手を倒し、優勝を決めた瞬間は、会場を最もどよめかせていました。

今大会ではHPの低いポケモンが多く使われていたため、ワザ「マジカルシンフォニー」でバトルポケモンとベンチポケモンを2匹同時に「きぜつ」させることが可能でした。また、MタブンネEXのようにHPが高いポケモンが出てくることは他のプレイヤーにとっては想定外で、対抗策を練られていなかった点も、MタブンネEXにとって有利にはたらきました。

 

そして、このデッキのもうひとつの主力ポケモンはマギアナEX。鋼タイプと組むことを選択しながらも、鋼デッキでは定番のドータクンにしなかった判断は素晴らしいものでした。ドータクンでいわゆるエネルギー加速をするのではなく、マギアナEXで防御を固めたのは、今大会にオーロットBREAKが台頭すると見越してのことでしょう。「それ以外のデッキはなんとかなる」という見通しもあったと思われます。大会環境を読み抜いた上で、「相手からの攻撃を恐れず強いポケモンにエネルギーを付けていき、大ダメージのワザでシンプルに攻撃していく」という王道の強さが、勝利に結びついていました。

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鋼デッキの定番であるドータクンではなく、マギアナEXを組み合わせた選択が見事。

シニアディビジョン 優勝デッキ

シニアディビジョンでは、メガヤンマBREAK+ビークインデッキが優勝。このデッキの使いかたは複雑です。「ハイパーボール」や「バトルコンプレッサー」を使って、トラッシュにポケモンを溜めつつ、手札が4枚になるようなプレイングを行っていきます。そしてメガヤンマの特性「ソニックビジョン」の効果で、エネルギーを節約しながら攻撃したり、トラッシュにポケモンがたくさんいるときは、ビークインのワザ「ビーリベンジ」で大ダメージを与えたりします。常に最良の状況判断をし続けなければならない難易度の高いデッキであるにも関わらず、選手はうまく使いこなしていました。

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プレイテクニックの高さで言えば、「炸裂バルーン」を使うタイミングが絶妙でした。「炸裂バルーン」がはたらくと相手にとって致命傷になる、しかし相手は今、攻撃せざるを得ない。そんな、相手を八方ふさがりにするタイミングを見極めた使いかたでした。このような高度なプレイが見られるのも世界戦の醍醐味です。

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このデッキには、特筆すべき点がもうひとつあります。それはほとんどがコモン、アンコモンのカードで構築されているということです。強いデッキにはM進化ポケモンやBREAK進化ポケモンが多く使われますが、手に入りやすいカードでも、デッキ構築とテクニックによって世界チャンピオンになれる。それをここで知らしめてくれました。正直、メガヤンマBREAKがまさか世界戦で優勝するとは、開発時には想像していませんでした……。

ジュニアディビジョン 優勝デッキ

ジュニアディビジョンは日本人選手同士による対決でした。「ダークライEX + イベルタル + ギラティナEX」VS「オーロットBREAK」の対決となり、優勝したのは、タイプの相性で有利だったダークライEX+ギラティナEXデッキです。優勝した選手は、デッキのもうひとつの主力であるギラティナEXを使うことをやめ、有利な悪タイプのダークライEXやイベルタルで押し切るプレイへ切り替えた判断が見事でした。最近のジュニアディビジョンのレベルの高さが窺えました。

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ポケモンWCS2016 総評

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今大会の特徴は、出場したデッキのバリエーションの豊富さです。頂点を極める最高峰の戦いとなると、選び抜かれたいくつかのデッキに絞られることが多いものです。しかし今年は予選から「MレックウザEX」「よるのこうしん」「ゲッコウガBREAK」「オーロットBREAK」「ガマゲロゲEX」のほか、「イベルタルEX+ダークライEX」などの悪デッキ、いろいろな鋼デッキと、ほかにも多様なデッキが出場していました。その状況を予想し、自分はどの相手を意識するのか、逆にどのデッキを切り捨てるのかを考えることが重要になりました。

そのなかでも「オーロットBREAK」「ガマゲロゲEX」の存在は誰もが意識して対策していたとみられ、グッズが使えなくなっても冷静なプレイでやりすごしていたり、デッキ構築を見直して対策となるサポートを増やして臨むプレイヤーが多かったです。世界戦に出場する選手は皆、環境を読み、対応するということを的確に行っていました。

以上が、僕が見た「ポケモンWCS2016」です。

カード対戦をしていない人には分かりにくい内容だったかもしれませんが、ポケモンカードゲームの楽しさや、得られるものの多さを少しでも感じてもらえたら幸いです。

そして出場した選手のみなさん、本当にお疲れさまでした!

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マスターディビジョンで優勝したイトウ シンタロウ選手と。見事な戦いでした!

(長島敦)

 

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