AUGUST 25, 2017

クリーチャーズのグラフィックデザイナーの仕事【第3回】 「ポケモンコイン」のデザイン

はじめまして。入社5年目になるデザイナーの新保綾乃です。これまでポケモンカードゲームに関するいろいろなデザインを担当してきましたが、中でも“ポケモンカードゲームならでは”のアイテムが「ポケモンコイン」ではないでしょうか。今回はこのポケモンコインのデザインについてご紹介します。

【新保綾乃】
主な担当:ポケモンカードゲームのカードDTP、サプライデザイン、パッケージデザイン、ロゴデザイン、ポケモンコインデザイン

ポケモンコインとは?

ポケモンコインは、対戦をしているときにコイントスをして、オモテかウラかで判定するためのアイテムです。“ここでコインでオモテが出ればワザが強化される!”といったものです。
ポケモンコインは、ポケモンカードゲームで遊ぶのに必要なものがそろったセット商品の中に入ることがほとんどです。毎回、そのセット内容に合った絵柄をつくりますので、現在では国内だけで約130種類以上のデザインがあります。

ポケモンコインは海外専用のものがあって、それも日本でデザインしています。海外用のコインは日本用よりも大きくて、素材も違います。最近は海外コインのデザインをすることのほうが多くなっています。私がこれまでに手がけたコインデザインも、海外用のほうが多いのです。

左が国内専用で右が海外専用です。サイズは国内よりも大きいです。海外専用コインは本体素材に色のついたものが使われることもありました。

提案用のラフデザイン作成

コインもほかの商品同様、企画チームで商品のコンセプトを決めたうえでデザインチームに発注されます。コインが入る商品の仕様と使用ポケモンが決まっているので、その情報をもとにデザインを考えます。たとえば「ポケモンカードゲーム サン&ムーン スターターセット草・炎・水」なら、シリーズ最初の商品で最初の3匹をテーマにしたデッキなので、コインにはモクロー、ニャビー、アシマリがデザインされています。

多くの場合、ゲームアート(※)、ポケモンの設定資料、カードイラストなどを元にして、これらのポケモンがコインの円の中にうまく収まるようにデザインします。大きさやトリミングの調整や、3Dイラストの影をデフォルメしたりします。細かいパーツの線は細くし、逆に輪郭線は太くするなども行います。

ラフデザインの案出しはスピードが大事なので、ラフデータのつくり方は人それぞれ、やりやすい方法で行います。Adobe Illustratorでつくる人もいれば、手描きをスキャンする人もいます。私はAdobe Photoshop上で画像をトレスなどしてラフデータをつくります。

3~4案ほどつくったら、チームリーダーに見せます。ポケモンの特徴をよりわかりやすくするためのトリミングや、体のパーツの見せ方などを客観的にアドバイスしてもらいます。その後、アートディレクターに提出します。自分のイチ推しのものや、ポケモンのデザインがわかりやすくなっているか、物として魅力的か、などを相談しながら、1案に絞ってもらいます。

カードイラスト(右上)やゲームアート(右下)を元に、コインのラフデザインを作成します(左)。

しかし、ゲームアート、設定資料、カードイラストの中のどれも、コインのデザインとしてうまく収まらないこともあります。そんなときは自分で描き起こしたり、イラストの一部を改変して収まりの良いイラストに仕上げます。

最近作成したルガルガンのコインは、ゲームアートをもとに作成していますが、そのままだと目や口まわりの表現が製造上再現が難しいので、少しだけ顔を正面寄りに向かせて左目の見える範囲を大きくしたり、口の下あごの見え方を変更しています。ほかに、目線を変えたり影を少し入れたりもしています。

ゲームアートの構図に決まりました。一番上の画像だったものを、段階的に調整していきました。

(注記)
※ゲームアート:『ポケットモンスター』シリーズの開発元である株式会社ゲームフリークが作画する、ポケモン、主要な人物キャラクター、一部のどうぐなどを描いたアート。基本的に各対象を単体で描き、それぞれ1点ずつしか存在しない(同一キャラ・どうぐについて複数のアートは存在しない)。ゲームのパッケージや説明書、広告宣伝・広報、攻略本などのほか、ポケモンカードゲームにも使用されている。

デザインデータ作成

ラフの時点でデザインはほぼできあがっているので、入稿できる最終データづくりにとりかかります。ポケモンコインの入稿はaiデータでの納品となります。先述の通り私はラフデザインはAdobe Photoshopで行っているので、Adobe Illustratorの作業に切り替えます。自分のラフデータをパスでトレースしていきます。

コインのデザインは、製造上のルールがいくつかあります。溝の幅は最低何ミリ以上とか、箔をプリントする部分の最低面積などです。コインは本体に溝を彫って、彫っていない部分に箔をプリントするというつくりになっていて、デザインの細かさに制限があるのです。
また、どのポケモンコインも統一した印象にするために、製造ルールとは別に、線の太さや、ポケモンの顔の大きさと背景の割合なども差がでないように決めています。

これらの条件を満たすために、ポケモンによっては少しデフォルメして対応します。毎回ほぼ必ず調整を入れるのは「目」と「歯」です。目や歯のパーツは小さいうえに線が多いので、本来のポケモンのデザインよりも大きくすることが多いです。かわいらしいデザインのポケモンは、もともと目が大きく歯が見えていないことが多いので、あまり変えません。

たとえば海外専用のゼルネアスコインの場合。ゼルネアスの目の中に「×」マークがありますが、このマークを瞳の中から取ることはできません。ですので、ゼルネアスの瞳の大きさを105%ほど大きくして、×マークを表現できるまで大きくします。拡大に伴って白目の部分や目のまわりの隙間もコイン規程以下にならないように線を動かします。

ラフ案:小さくトリミング

ラフ案:大きくトリミング

最終デザイン

監修

ポケモンを描いたりデザインしたものは、必ず“形状監修”があります。ブランド管理やプロデュースを行っている株式会社ポケモンに、ポケモンの形状が設定からいつだつして離れていないか確認していただくという工程です。

コインの場合はこれと同時に、“製造監修”があります。上で述べたような製造ルールが守られたうえで製造が可能かを、製造会社の方に確認していただきます。

紙でも立体でも本でも、何にでも多少なりとも製造上の制約はあります。どんなにかっこいいデザインを提案したとしても、物理的に再現不可能だったら、それはデザインとして成立しません。ポケモンコインも、製造ルールに則ったうえで、そのポケモンらしさを損なわず、見栄えの良いデザインを模索しています。

入稿データの修正作業

形状・製造監修でOKが出たら、データを製造会社さんにお渡しします。通常のデザイン物だと製造会社さんでデータを変えることはあまりありませんが、コインの場合は、このデータから「角を丸める」という調整を製造会社さんにしていただきます。コインは角のあるデザインが基本的にNGなのです。

海外版だと、この角を丸める調整は私が行います。また、パスをすべて統合して納品するという決まりがあるので、パスファインダーを駆使して複合パスを1つにまとめます。
実は以前は、パスを扱ったデータ作成が苦手でした。でもコインのデザインをいくつも担当したおかげで、だいぶ自信がついてきました。

パーツごとにばらけていたパスをひとまとめに。

箔を選んで完成

最後は、コインに貼る箔を選びます。色や柄がたくさんありますので、箔の見本帳を見ながら、ポケモンのタイプや強さ、商品のイメージ、直近で使用した箔などを総合的に考慮して決めていきます。使いたいものをいくつか選んだら、アートディレクターと相談しながら最終決定します。
印刷物の“色校”にあたる、実物のサンプルが上がってきますので、問題がなければこれで完成となります。

最後の箔選びは先輩と相談しながら。とても楽しい作業です。

ルガルガンのコインはまだ実物が手元にないので、デザイン例に挙げた海外用ゼルネアスのコインです。

いろいろなポケモンコインと思い出

20年の間につくられた数々のポケモンコインのなかから、いくつかご紹介します。これらはクリーチャーズの先輩デザイナーの方々によるものです。

ポケモンコインといえば、この「ラッキーコイン」。ポケモンカードゲームの最初のコインです。ベテランプレイヤーの方なら誰もが「懐かしい」と思うのではないでしょうか。2016年の20周年のとき、当時の商品を再現した「ポケモンカードゲーム スターターパック」で同じデザイン・箔ちがいで再登場しました。

「ポケモンカード ファンクラブ」でポイントを貯めるともらえた「イマクニ?のドードーコイン」です。イマクニ?が描いたヘナヘナのドードーなんですが、とても細かいデザインです。周りにいるドードーのシルエットの首などは細すぎて、当時よくOKが出たなと思います(笑)。

国内のコインはほとんどが黒い素材なのですが、過去には変わったものもありました。2001年ジムオフィシャル大会の参加者プレゼントになった「VSコイン」は、白い素材に青い箔です。そして2003年のジムオフィシャルでは、アルミ風のコインが登場しました。これは、オモテウラがわかりにくそうなので、実用ではなくコレクション向きですね。

体の大きなポケモンはディテールも細かいので顔だけがデザインされているものも多いのですが、このホウオウとルギアはきれいに全身が収められています。いっぽう、ポケモンの特徴を一部分だけ大胆にトリミングした「メタグロスコイン」もオシャレです。真正面の構図が潔いですね。

このミュウは個人的にいちばん好きなコインです。友達の家に遊びに行った時にこのコイン見せてもらって、子ども心にこのコインがかわいくて、すごく欲しかったのをよく覚えています。キラキラでプラスチックだし、なんだかとても良いものに見えた思い出があります。

もともとミュウがポケモンの中で一番好きなポケモンで、ミュウのグッズは積極的に集めていました。当時は漫画雑誌の付録などは紙製のものが圧倒的に多くて、プラスチックのものや、キラキラしたものに対して憧れが強かったです。また、コインのイラストが描き下ろしだったことも欲しいなと思った一因でした。色々グッズを集めていると、これとこれは同じ絵だな、という認識はあったので(笑)。

いま見ても、このイラストのデフォルメは上手だなと思います。顔に対して体がとても小さいのですが、バランスの悪さを感じません。結局、このミュウのコインが入った商品は見つけられなかったので、手に入れることはできなかったのですが……。

最近はかわいいポケモンのコインをつくることが少ないので、機会があれば大胆なデフォルメにも挑戦してみたいです。大好きなシュシュプとか!

ご応募お待ちしています!

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