DECEMBER 17, 2014

踊るミュージックアプリ『aDanza』開発者インタビュー vol.3
キャラクターディレクション 西田大作

ビキニ、パンダ、タラバガニ。 日常の断片から「ダンサー」をつくり上げるキャラクターデザインについて

『aDanza』の最大の特長は、アルパカやカエルなど、ごく普通の生き物がリアルに踊るという意外性。そして最新のver.1.0では、大根、ハムスター、パンダ、ズワイガニがダンサーとして登場し、ますます強烈な違和感を放っています。今回リリースされた彼らの魅力を、キャラクターディレクション担当の西田大作に語ってもらいました。

 

Profile:

クリーチャーズ 開発一部 兼 開発本部ネットワークサービス室 西田大作(にしだ だいさく)
1999年から現在まで「ポケモンカードゲーム」のビジュアルコンセプト、イラストディレクション、カードデータ開発などを手がける。 『aDanza』では、UIデザインとキャラクターディレクションを担当。

環境アプリとしてのキャラクター選び

最新版のver.1.0で、新たなダンサーが追加されました。今回のラインナップはどのように決まったのでしょうか。

西田:僕がラインナップを決めるようになったのはパイナップル・ビキニ・力士からなのですが、僕のダンサー選びの方針は、「季節を感じられるもの」です。ver.1.0は12月のリリースで、冬は食べ物がおいしい季節なので、最初に鍋料理を連想しました。タラバガニは写真素材がすでにあったので、豪華にカニ鍋にしたらテンションも上がるだろうと思い採用しました。大根やこんにゃくも冬が旬の食材で、おでんには欠かせないですし、鍋シリーズで揃えてみました。

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鍋シリーズ。こんにゃくは、タラバガニか大根の購入特典となっている

最初から意外性を狙うのではなく、かなり生活感のある選定なんですね。

西田:『aDanza』のダンサーは、めずらしい生き物やとがった存在ではなく、誰でも知っている親しみのあるものを取り入れるようにしています。カニもこんにゃくも大根も、スーパーなどで日常的に見かけますよね。『aDanza』を使ってくれている人が、そういうものを目にしたときに、「そういえば『aDanza』にカニがいたな」と、無意識のうちにでも思い出してくれるといいなと思っています。8月にリリースしたビキニやパイナップルも同様で、夏らしさを感じられるラインナップにしました。力士は、大相撲の九月場所に合わせて選びました。まだ国内のみのリリースですが、もしも海外版を出すことができたら、日本の四季や行事を楽しんでもらいたいし、日本でつくられたアプリだということを伝えたいという気持ちもあります。

あくまでも日常に寄り添ったキャラクターだからこそ、「ダンサー」になったときのギャップが活きるのでしょうか。いっぽうパンダやハムスターは、一般受けするかわいさを表現しているキャラクターです。

西田:ver.1.0からショップ機能が追加されたりと大きなリニューアルがあるので、ダンサーにもインパクトのあるアイドル的なキャラクターがほしいと思いました。『aDanza』をけん引していく実力のあるキャラクターといえば、パンダしかいませんよね。地球規模の絶対的アイドルであるパンダを出すことによって、『aDanza』を盛り上げたいと考えました。ハムスターは、ひとりだけちっちゃいのがいたら面白いかな、というところです。季節も関係ないですし、誰でも知っている身近な動物です。ちょうど、素早い動きのヒップホップダンスのモーションがあったので、ハムスター特有のちょこまかした動きと組み合わせたらコミカルなかわいさが出ると思いました。

大根やこんにゃくは、踊る姿を想像できたのですか?

西田:踊れるデザインにしなければいけないという点は、少し悩みました。パイナップルのときは手足を付けてキャラクター化していましたが、今回は、実物であり得る形状を保つようにしたかった。こんにゃくは四隅をつまんで手足にしたようなイメージです。人型の骨組は入っていますが、こんにゃくをつまんで引っ張ったらこれくらいの形にはなるだろう、という範囲で動かしています。大根は、枝分かれしている不思議な形のものが収穫されることが実際にありますから、それを人間の手足に見立てれば、大根でありつつも人間の動きができると思いました。

キャラクター性を出すための地道な積み重ね

動物ですらないものを踊らせることに苦労はありますか?

西田:キャラクターを踊らせる仕組みや3Dモデリングは、特別な技術を使っているわけではないので、演出の細かい調整や工夫でキャラクターに個性をつけていくようにしています。苦労といえば、大根のモデルをつくっていたのは9月頃で、まだ市場に大根が出回っていなかったので、テクスチャー撮影に使うための見栄えのいい大根が見つからず、都内のあらゆるスーパーを探し回ったり。ほかには、大根の葉っぱを1枚1枚切り取ってキレイに洗って撮影するのに半日かかったり。そのようなアナログな手作業の部分のほうに、労力が割かれています。

今回も、撮影した画像をテクスチャーにしているんですか?

西田:基本的にはそうですが、パンダやハムスターなど、かわいさを表現したい動物は、ふわふわした毛並の質感を出すために手描きの部分もかなりあります。あとは目の表現が重要ですね。動物の目の写真をそのままCGに使うと、ものすごく怖くなってしまうんです。だから目はテクスチャーに手描きを加えて、かわいらしく見えるようにハイライトを入れたりしています。ときには、目を全部描き変えることもあります。いっぽうタラバガニやカブトムシは気持ち悪いのが個性なので、写真をそのまま使って、より気持ち悪く見えるようにしています。

リアルに見せるためには加工も必要なんですね。

西田:写真素材を使う際に気を付けなければいけないのは、実物に近いリアリティを求めすぎて、逆にグラフィック面がつまらない方向に陥ってしまうということです。『aDanza』はエンターテインメントなので、ダンサーとしてのかわいさや面白みは欠かせません。そのために、このアプリに必要な「リアルさ」を担保したうえで、元の素材が持つ特徴やディテールを誇張したり、手描きを多く加えていることもあります。こちらの望むリアルさとキャラクター性を両立させられるかどうかは、3Dデザイナーの技量やセンスに拠るところが大きいです。『aDanza』ではそこがとてもうまくいって、イメージ通りのものができていると思います。

3Dデザイナーさんにはどんなディレクションをするのでしょうか。

西田:ハムスターやパンダは、全体的なプロポーション以外にも、目の位置や鼻の高さ、口を開いたときの歯の見え方などにも細かい注文をつけます。先述の通り、本物に見えるというのは必須課題なので、それぞれの特徴をよく理解しなければいけません。そのため、和歌山県にある「アドベンチャーワールド」というテーマパークにも、パンダを見に2回ほど行ってきました。実際のパンダはもっといかつくて熊に近いのですが、『aDanza』ではだいぶデフォルメして、丸くかわいくしています。ただ、首の後ろの猫背なラインなど、パンダらしさの出る重要な部分は残して、キャラクター化しすぎないようにしています。ほかにも、大根の表面の凹凸やこんにゃくの中の気泡やムラなども、ほどよく残すようにお願いしています。こんにゃくは、水に濡れている質感を出すために、光沢を強めに出してもらっています。このようなことを3Dデザイナーと相談しながら、小さなひと手間を積み重ねています。

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「アドベンチャーワールド」のパンダたち(撮影:西田大作)

ダンサーを引き立たせる背景づくり

今回、「サンセットビーチ」という新たな背景も登場しましたね。こちらも西田さんがディレクションしているのですか?

西田:この時期はダンサーづくりで手いっぱいだったので、実は、背景をつくり起こす余裕がなかったのです。そこで、すでにある「ビーチ」のテクスチャー変更だけなら少ない労力で新たなステージがつくれるということで、「サンセットビーチ」にしました。しかし、「ずっとながめていたくなるような夕焼け」を求めた結果、単なる色変えでは済まず、空も海も3Dデザイナーにすべて描き変えてもらうことになってしまいました。また、夕方の浜辺らしいライティングの調整も思いのほか苦労しました。ダンサーに当たる光の強さ、夕陽の色とそれに合わせた海の輝き具合、影の色や濃さなどです。結果的に、新規の背景をつくり起こすくらいの労力がかかりました。コストや時間には制限があるので、その中で最大限なにができるかを考えるのも僕の役目ですが、その点ではかなりオーバーしてしまいましたね。

その甲斐あってか、とても美しい色合いが出ているように思います。

西田:サンセットビーチのテーマは「ロマンチックファンタジー」です。水平線の上はオレンジ色の空なのですが、少し上空にいくと一気に夜空になります。実際にはこんなに急に暗くならず、もっとオレンジ色が続くのですが、ドラマチックに見せたかったのでこのようにしています。これも、先程お話したような「リアリティを求めすぎてつまらないグラフィックにならないように」という方針に基づいた演出です。ちなみに、夜空には有名な星座もいくつか配していますので、見つけていただけるとうれしいです。

『aDanza』の特長は、シンプルな見た目の奥に秘められた遊び心なのでしょうか。

西田:『aDanza』は、ごく一般的な3DCGソフトとゲーム開発エンジンを使ってつくられているアプリです。だからこそ、技術力を見せるのではなく、ユーザーさんが楽しいと思ってくれる演出や、ほかのアプリにはない個性を出すという点に力を注いでいます。

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ある条件で発生するハムスターの増殖。ほかにも、夜空に流星群が現れるなど、細かい演出が織り込まれている。

特に注目してもらいたい点はありますか?

西田:ダンスシーンだけでなく、音楽がかかっていない待機状態のダンサーも見ていただきたいです。アルパカはちゃんと四本足で立っていますし、大根は地面に埋まっています(※「AR」背景を除く)。これは、元のキャラクターらしさをどこかにちゃんと残したいと思ったためです。パンダは緊張感のない座り方をしていますが、とてもパンダらしさを出せたと思います。この状態から踊り始めたときのギャップは、自分でも気に入っています。

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パンダの待機状態とダンス状態

最後に、『aDanza』の今後の展開を教えてください。

 西田:これまでは世の中にあるものをダンサーにしてきましたが、今後は『aDanza』オリジナルのキャラクターをつくる予定です。魔法少女のようなアニメ風キャラクターに挑戦したいです。また、新たな背景も出来上がりつつあります。こちらはビーチとは一変して、かっこいい雰囲気の背景になります。かなりの力作ですので、楽しみにしていただきたいです。

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西田大作

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