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JULY 18, 2014

音楽とダンスをシンクロさせるミュージックアプリ『aDanza』開発者インタビュー vol.2
CGデザイナー 高橋洋之

動物や昆虫をリアルに再現し、人間のように踊らせるための工夫とは?

クリーチャーズが手がける初のiOSアプリ『aDanza』。このミュージックプレイヤーアプリの大きな魅力としてあげられるのが、音楽に合わせてダンスを披露するカエル、アルパカ、カブトムシなどのユニークな生き物たちです。姿かたちも実物そのもの、体表面の色や模様、皮膚や骨格、体毛の質感までがリアルに再現された3DCGのキャラクターモデリングと共に、ダンスモーションを制作したCGアーティストの高橋洋之に、開発エピソードを聞きました。

 

Profile:

クリーチャーズ 開発2部 CGチーム / アーティスト 高橋洋之(たかはし ひろゆき)
服飾デザイン系専門学校を経てクリーチャーズに入社。以降、GBA『のののパズル ちゃいリアン』のデザイン全般、NDS『歩いてわかる 生活リズムDS』、『ポケパーク』シリーズのほか、3DS『ポケットモンスター X』『ポケットモンスター Y』ではキャラクターモーションを手がけている。ほかにキッズアミューズメントマシン『ポケモントレッタ』のモーション制作を行うなど、CGクリエイターとして活躍。最新作となる『aDanza』ではキャラクターモデリングとモーション制作を担当。

ただの「カエル」がダンサーに大抜擢。キャラクターを立てることの難しさとは?

クリーチャーズ開発タイトルのCG、キャラクターモーション全般を幅広く担当する高橋。iPhoneアプリ『aDanza』に携わるようになったのは、企画と内容が固まりつつあった2013年夏のことでした。

高橋:当初はプランナーが仮に作った、のっぺらぼうの人型キャラクターが踊っていたんです。本格的に開発を進めることになり、キャラクターのデザインを作ることが最初の僕の仕事になりました。

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『aDanza』の前身となる開発画面

これまでクリーチャーズで手がけてきた作品の中で、キャラクターを立てることの難しさを何度も経験してきたという高橋。作品や対象ユーザーにぴったり当てに行くようなキャラクターはなかなか作れるものではありません。今回も、ゆるキャラ風やアニメタッチなど、さまざまなキャラサンプルを試作したそうです。

高橋:同時に社内でオリジナルキャラクターを募集するコンペも開始しました。ただ、結局どの案にもあまりピンと来なかった。そんなとき企画ミーティングで、「リアルな動物が踊ったら面白いんじゃない?」という声があがり、僕が「じゃあカエルにしよう」と(笑)。最近はカプセルトイで、カエルのキャラクターが人気だったり、自分の周囲にカエル好きの女性が何人かいたりしたので、カエルは女性に受け入れられると勝手に確信していたんです(笑)。そもそも企画当初から、「流行に敏感で口コミ力の高い女子高生に人気が出てほしい」というテーマがありましたし、通勤・通学中にスマホを触っている女性にも楽しめるアプリにしたいという気持ちもありましたから。最終的に一番しっくりきたのが、この「普通の動物」だったんです。

リアルな動物キャラクターが人のダンスを踊ることに手応え

カエルのキャラクターにGOサインが出て、高橋はテストモデル制作に入りました。

高橋:まずはテストとしてカエルの3Dモデリングデータを作り、写真からテクスチャーデータを作って3Dモデルに貼り込んでみたら……これが結構面白い! カエルは手足が長くスタイルが良いので、意外にもすごくかっこよかったんです。ここで、リアルなカエルを踊らせるのはアリだと確信しました。

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高橋洋之

しかも、『aDanza』に登場するカエルは、自然のままの4足歩行(?)ではなく、人間のような2足歩行。細長い2本足で踊るカエルのインパクトは強烈です。

高橋:『aDanza』は、もともと人型のモデルを踊らせることが大前提だったので、キャラクターは2本足で立つことが必須だったんです。必然的にカエルも2本足で踊らせることになり、それがまた見た目と動きの意外性を増幅させました。

カエルは『aDanza』のコンセプトを具現化するのにピッタリのキャラクター。しかし、カエルだけではもの足りない。そこで高橋たちのチームは、あともう2種類のキャラクターを考えました。

高橋:カエルは両生類なので、あと2つは別種類の動物がいい。やっぱり親しみのある、ほ乳類が欲しいので、こちらも女性に大人気のアルパカにしよう! そしてあと1つは……昆虫もいいかも? だったら、カブトムシでしょう! と、わりと思いつきのアイデアでしたが(笑)、そこに手応えは感じていました。

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『aDanza』※画面は開発中のものです

ここで、犬や猫ではなく昆虫をチョイスしたのも『aDanza』開発チームのユニークなところ。ちなみに、高橋に好きなゲームを聞いたところ、「自分のお金で最初に買ったゲーム機はセガサターン。海外ゲームの『スリー・ダーティー・ドワーブズ』が大好きでした」と、カルトなアクションゲームの名前があがりました。高橋独特のセンスも、『aDanza』の世界観に一役買っているようです。

動物たちを2本足で踊らせるために骨格を微調整した、キャラクターモデリング

こうして、カエル、アルパカ、カブトムシの3つに決まった『aDanza』の登場キャラクター。では、動物の3Dモデリングデータはどうやって作りこんでいったのでしょうか。

高橋:まずは、動物の骨格を勉強するところからのスタートでした。アルパカは見慣れた4足歩行の動物ですし、カブトムシは節々がハッキリしているので、それほど難しくはなかったのですが、問題は独自のカラダ作りのカエル。まずは標本画像を探しながら、一つひとつ調べていきました。

しかも『aDanza』のキャラクターたちは、いざダンスが始まると2本足で立ち上がらなければなりません。骨格的にも無理が生じたのではないでしょうか?

高橋:実際の骨格標本は3Dモデリングの参考にはしましたが、3Dモデルの骨格は、2本足で立ち上がったときに踊りやすいよう、少しずつずらして作っています。カエルやカブトムシは音楽が鳴り始めるまで、地面に這いつくばっていますので、2本足で立ったときと、しゃがんでいるときで、違和感がないように調整しています。

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そして、動物をよりリアルに表現するための重要なポイントが、体の色や模様、質感を生み出すためのテクスチャーデータです。『aDanza』では、実際の動物写真を使ってリアルさを追究しました。

高橋:カブトムシは社内のスタッフが捕まえてきてくれたので(笑)、その写真を撮って、テクスチャーマッピングしています。アルパカは、僕がとある動物園まで行って撮影してきました。ただ、動物園のアルパカの毛は、どうしても薄汚れた感じにしか撮れないので、色の調整が大変でした。

そしてここでもやはり、カエルが一番苦労したそうです。

高橋:家の近所に田んぼがあるという社内のスタッフに頼んで、2匹のカエルを捕まえてきてもらいました。カエルは複雑な模様が多いので、カラダの隅々まで撮影しなければいけません。特にお腹側はカエルもなかなか見せてくれないし、環境が変わると光の加減で体色も違って見えてしまうので、色補正をかなりかけましたね。また、カエルの細い手足は皮膚自体が透けてしまうので、そこもかなり補正しています。テクスチャーを貼る際も、模様を上手く繋げるのに苦労しました。

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『aDanza』のモデルになったカエル

リアルな動きの秘密は、プロのダンスのモーションキャプチャ

3Dモデリングデータが完成して、高橋が次に手がけたのは、ダンスのモーションです。『aDanza』に登場するキャラクターのリアルな動きは、プロのダンサーのダンスをキャプチャし、ループさせたもの。ループの繫ぎ目の動きがスムーズになるように、前後の挙動まで気を使う撮影は、ダンサーにとっても、高橋さんたちにとっても初の試み。試行錯誤しながらの撮影だったそうです。

高橋:モーションキャプチャの撮影は、2回に分けて行いました。1回目は男女2名のプロダンサーに、ジャズダンス、ブレイクダンスなど、スタイルとして名前がついているダンスを思いつく限り踊ってもらいました。動きをきれいにループさせるためには、踊り始めと踊り終わりがまったく同じ位置にならないといけない。さらに、前後の動きもシンクロしていないといけないので、ダンサーさんには何度もチャレンジしていただきました。そして2回目の撮影では、社内のスタッフがただリズムにノってる踊りとか、素人パラパラとか、ラジオ体操とか(笑)、あえて素人っぽいダンスをキャプチャしたんです。プロのダンスは上手いけど、動きとしてはキレイすぎるので、素人のダンスもデータ化しておこうと。ちょっとふざけたり、素人独特のダメさを取り入れたくなるのはクリーチャーズの社風でしょうかね(笑)。

『aDanza』制作を終えてみて

最終的に「カエル=ブレイクダンス」「アルパカ=アイドルダンス」「カブトムシ=阿波踊り」という組み合わせが決まり、関節の動きを最終調整するなどして、ついに『aDanza』β版が完成。リリースを目前に控えた今、高橋は何を感じているのでしょうか。

高橋:『aDanza』はミュージックプレイヤーアプリなんですが、キャラクターを眺めて楽しい「環境アプリ」としても、すごく面白いものになったと思います。ずっと飽きずにキャラクターの踊りを目で追ってしまうし、曲とダンスが奇妙なくらいシンクロするタイミングが楽しいので、注目してみてほしいです(笑)。今後も、予想もつかない意外なキャラクターが続々登場する予定なので、末永く『aDanza』を楽しんでいただきたいですね。

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